「ムッチーズカフェ」のカフェのコツ|No.007
東京都杉並区の高円寺にある、大人のための絵本カフェ『ムッチーズカフェ』はもうすぐ開業から4年目に突入します。同じ大学に通い「いつか一緒に何かをやりたいね」と話しながら資金を貯め、「絵本カフェ」を始める決心をした二人。開業するまでの苦労や絵本カフェならではの喜びを、井上まどかさん(左)とむっちさん(右)に伺いました。
連載「長くつづくカフェのコツ」
カフェをたのしくつづける秘訣を現役オーナーさんにインタビュー!これからの開業を希望するみなさんにはもちろん、今まさに店舗を運営されてるオーナーさんにとってもためになるヒントが満載です。
コンセプトや看板メニュー、また、収益の多角化や集客などをテーマにしています。
──お店のコンセプトを教えてください。
まどかさん)『大人のための絵本カフェ』です。最初ターゲットとして考えていたのは、高円寺という場所柄もあったので20~30代の女性に絞っていたんですが、オープンしてみたら20~60代まで幅広く来店してくれて、男性のお客様も遊びに来てくれます。カップルで絵本を読みながらお食事を楽しんだり、むっちさんがスパイスから手作りしている開業当初からの人気メニュー「地獄の黒カレー」を食べに来てくれる方も多いです。
また、絵本の世界観をモチーフにしたフードメニューもオリジナルで作っているので、絵本作家さんや、そのファンの方にも喜んでもらっています。他のお店だと、常連さんの割合が増えてくると思うんですが、うちの場合だと常連さんと新規のお客さんが半々です。
──イベントや原画展も開催されていますよね。
まどかさん)そうなんです。「高円寺フェス」という地域イベントに参加してカレーを提供しました。あとは「大人のための夜カフェ絵本」というイベントも2ヶ月に1回開催していまして、もうすぐ30回目を迎えます。イベントには常連さんが参加してくれるので、私たちもゆるく楽しくイベントをお手伝いさせてもらっています。本の販売はしていないのですが、絵本作家さんの原画展も年に数回開催しています。期間は2週間ほどで、作家さんが告知してくれたり、積極的に宣伝してくれるので、常連さんはもちろん、初めていらっしゃる作家さんのファンの方にもご利用いただけています。あと店内が広くてバックスペースも充実しているので、芸人さんのファンイベントや、着ぐるみのイベントなども開催したんですよ。
──立地もいいですし、スペースも広いので借りる方のメリットも大きいですよね。
むっちさん)その分、家賃もお高いんですけどね(笑)。この店舗も3年くらい探してやっと見つけたところだったんですけど、私たちの前に入っていたテナントさんは1年と続いていなかったんですよ。『大人のための絵本カフェ』をコンセプトにしているから、カルチャーの香りがするエリアを希望していて、中央線沿いかな? という感じでこの場所に決めました。もうすぐ4年目に入る今思うのは「ここまでの広さはいらなかったかな」ってことですね。また、うちは2階なのですが、1階の入り口が狭いのもやってみると大きなデメリットでした。
──なるほど。やっていく中で見えてきたんですね。実際に開業の準備ではどのようなことをされたんでしょうか?
まどかさん)私ははじめ、保育士の仕事をしながら、資金を貯めていました。その後、おもてなしを学ぶためにテーマパークで働いたり、カフェでも働いて実際のオペレーションも学びました。
むっちさん)私も開業が見えてきたあたりから、飲食店開業のスクールに通っていました。実際に今出しているお店のメニューはスクールの方と一緒に考えて作りました。また、開業資金の計算や運営コストについてもしっかり学べたのでよかったですね。よく「300万円で開業しました!」なんていう記事をネットで見たりしますが、実際は全然足りないと思います。もちろん自分の自宅でやるとか、内装を全くいじらずにスタートするなど、方法はあるかと思いますが、普通に始めるとしたら、物件取得費だけでも数百万円のお金がかかりますし、内装や厨房機器も大きな費用がかかります。また、運転資金をいかに残せるかっていうことも準備のうちから考えておいたほうがいいので、想定よりもかかると思って資金計画を立てた方がいいと思います。
──リアルな声ですね。お二人で開業するということで、苦労されたことや難しかったことはありますか?
むっちさん)意見のすり合わせですかね。『大人のための絵本カフェ』ってメインコンセプトは共有できているつもりだったんですが、どんな内装か、どんなメニュー構成かという細かいところまでイメージを共有できていなかったんですよね。一緒にひとつのものを作り上げるのは想像しているより大変で、ある程度まとまってきてから「なんか違う」ということがあると「もっと早く言ってよ~」って思っちゃいますから(笑)。
──イメージの共有は確かに大事ですね。ちなみに二人でやっていて良かったと思うことはありますか?
まどかさん)一人でお店をやっていたら、自分に全責任がきてしまうけれど、二人ならお互いをフォローできるし、大きな悩みを共有できることは本当良いことだと思います。日頃から思ったことはちゃんと吐き出して、すり合わせしていくことが大切ですね。最近ようやく、お互いの役割分担がはっきりするようになりました。むっちさんが接客、私が絵本に関することを発信する立場として活動するみたいな。
むっちさん)まどかさんは絵本専門士の資格も取ったしね!
──「絵本専門士」ってなんですか?
まどかさん)専門講座を受講して取得する資格なんですが、いくつかの受験資格に加えて選考があるんです。受講するまでの倍率がなんと今年度では20倍くらいあったそうです。結構ハードルが高い資格ではあるんですが、絵本専門士になれたことで絵本の専門家として自信持ってお仕事できるようにもなりました。
──それはすごいですね!
まどかさん)まだ日本には250名くらいしかいないんです。絵本専門士のパンフレットに私のコメントを掲載してもらっています。そこでお店を知ってもらえる機会も増えました。
むっちさん)本当すごいですよね! まどかさんには絵本に集中してもらって、私は仕込みと接客をゆる~く、楽しく頑張ってますよ!(笑)
──いいですね! カフェをやっていて楽しいことと大変なことをそれぞれ教えてください。
むっちさん)大変なことはもう、全部ですよ!(笑) 楽しいのは常連さんや作家さん、土日の忙しい時間帯でバイトに入ってくれているスタッフとワイワイしている時間ですかね。お店を閉めた後にみんなでご飯食べに行ったり、休日に作家さんの展示見に行ったり……って仕事してないみたいですね(笑)。
まどかさん)むっちさんに「会いたい」ってお客さんも多いからね! なんだかんだ言っても自分たちが楽しいのが一番だと思うんです。お客さんがなかなか来ないなーって時もあるけれど、やっぱり私たち自身が楽しまないと、お客さんにその思いって伝わるんだなって感じるんです。期間限定のメニューも、利益のためにって作ったメニューより、「こんなの面白いよね!」と楽しんで考えたメニューの方がヒットするんですよ。お金のこととか、運営の中での悩みとか悶々とした気持ちでいるより、毎日がワクワク楽しい方が、当たり前だけど楽しいことが起こります。
──お客さんに雰囲気が伝わるってことありますよね。ではこれから開業したい方にメッセージをお願いいたします。
むっちさん)開業するってことは本当大変なことも多いですが、どんな時も楽しむ気持ちを忘れないでやって欲しいということですかね。お金の計算も大事ですが、どんなに立派な目標を立てても思い通りになんてならないから、売り上げ目標と実績を睨めっこするのを辞めました(笑)。今も確定申告嫌だなーと逃げ続けて、色々溜まっていますけれど、やらざるを得ない時は必ずくるので、それはそれ、これはこれって感じで、楽しむことを優先してます。運営している人たちが暗いお店には、お客さんも来たくないですからね!
【カフェ情報】
ムッチーズカフェ
https://kojincafe.com/cafes/mucchiscafe/
https://mucchis-cafe.jimdofree.com
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〒166-0002
東京都杉並区高円寺北3-2-17 2階
電話:03-5364-9190
営業時間:【平日】11:30~20:00【土日祝】11:30〜21:00
定休日:水曜日(不定休あり)
広さ:23坪
客席数:24席
スタッフ:基本2名(土日は3人体制)