「SOL’S COFFEE」のカフェのコツ|No.018

今、若者に人気の街・台東区蔵前にあるSOL’S COFFEEは、2013年に開業した『SOL’S COFFEE STAND』、デザインプロダクトショップの中に併設されている『KONCENT × SOL’S COFFEE』、店内で珈琲焙煎も行っている『SOL’S COFFEE ROASTERY』、の3店舗を展開。そして2019年10月には福井県で4店舗目となる『SOL’S COFFEE LABORATORY』をオープンさせました。22歳からカフェ経営に関わっているというオーナーの荒井利枝子さん。多店舗運営していく苦労やスタッフの教育についてなど開業してからの10年間、そしてこれからについてお話をお伺いしました。

連載「長くつづくカフェのコツ」
カフェをたのしくつづける秘訣を現役オーナーさんにインタビュー!これからの開業を希望するみなさんにはもちろん、今まさに店舗を運営されてるオーナーさんにとってもためになるヒントが満載です。
コンセプトや看板メニュー、また、収益の多角化や集客などをテーマにしています。

──お店を始めたきっかけを教えてください。

もともと建築系の学校に通っていて、卒業後はインテリア関係の会社に就職が決まっていたんです。でも卒業間近になってリーマンショックの影響でその会社に就職できなくなってしまって…
途方に暮れていた時に、友人から自家焙煎のコーヒーで起業するという話を聞いて、「一緒にやりたい!」と思ったんです。このタイミングで就職ができなくなったことも何かの運命だと思って、その友人と一緒に起業することに決めました。友人のお父さんが10年以上の歳月をかけて作り上げた焙煎のノウハウを引き継いでの開業だったので、吸収する部分はしっかりと吸収して、時代に合わせて改良すべき部分は新たに構築してと、必死に試行錯誤しながらお店の形を作り上げていきました。

──1店舗目はどこで始められたんですか?

最初はコーヒーの移動販売からのスタートでした。地道に営業場所を増やして、お客さんもついてきた頃に、知り合いから新小岩にある物件を紹介してもらい、「SOL’S CAFE」を開業をすることになりました。ただ、立地的に新小岩はファミリー層が多く、当時は特にコーヒー専門店は敷居が高かったので、親子で楽しめるような「カフェ」として開業することになったんです。「お客さんが喜んでくれることはなんだろう」と日々考えて、メニュー開発をしたり、イベントを企画したりと様々な取り組みをしました。すると、地域のお客様もたくさん来てくれるようになって、街に根付いてきましたね。

ただそんな時に、一緒に経営をしてきた友人が突然カフェを辞めたいと言ってきて…
一緒にカフェ自体辞めるという選択肢もありましたが、私は「始めたからには10年は続ける!」という強い気持ちで始めたので、そこで代表を引き継いでカフェ経営を続けていくことに決めました。

──それは大変でしたね。1人でやるようになって変わったことはなんですか?

やはり今まで2人で考えていたことを1人で考えて決断しないといなくなったので、大変なことは増えました。中でも特に大きかったのはもともと辞めた友人がメインで担当していたコーヒーについてですね。
その友人もコーヒーの部分については継続してサポートしてくれてはいましたが、私が代表としてやっていくことになって必然的にコーヒーと向き合う時間が増えていったんです。そうなると、やっぱり「コーヒーの専門店を開きたい」という思いが強くなってきて…そんな時、知り合いから「コーヒースタンドをやらない?」と2坪の物件を紹介してもらって、2013年に念願だったコーヒーの専門店「SOL’S COFFEE STAND」を蔵前でオープンさせました。”毎日飲んでも身体にやさしいコーヒーを提供したい”というコンセプトを掲げていて、それは今もずっと同じ想いです。

──その後、多店舗展開していますがどのような経緯がありましたか?

SOL’S COFFEE STANDを開業してすぐにメディアに取り上げていただきました。それをきっかけに、とある企業さんからお声がけをいただき、オフィス内にコーヒースタンドをオープン、その後2014年には、同じ蔵前にあるデザインプロダクトショップ「KONCENT」さんからもお声がかかって、ショップインショップの形でコーヒースタンドをオープンさせることになったんです。 

同じ立地に店舗が増えたということもあり、蔵前で焙煎もできるようにと2015年には5店舗目となる「SOL’S COFFEE ROASTERY」をオープンさせました。蔵前に来たことで、運命が大きく変わりましたね。やはりメディアの力はすごいなと思いました。 

その後、立ち退きにより1号店である「SOL’S CAFE」は泣く泣く閉店し、オフィス内のコーヒースタンドも終了したので、そこからしばらくは3店舗の経営を続けてきましたが、縁あって2019年10月に福井県に「SOL’S COFFEE LABORATORY」をオープンさせ、現在は4店舗になっています。 正直ここまでくる過程では大変なことや悔しいこともたくさんありましたが、お客さん含め周りの人の支えがあってここまでやってこれたと思っています。本当に感謝しています。

──現在は何人のスタッフさんがいますか?

4店舗合わせて10名ほどです。基本的にどの店舗もレシピやメニューが一緒なので、同じスタッフが4店舗を兼任している形です。

──え、福井県の店舗も同じスタッフさんですか?

そうなんです。ゆくゆくは現地で任せられるスタッフにお願いしたいと思っていますが、やはり飲食店経営は「人」なので、立ち上げの今の段階は信頼できるスタッフに福井まで行ってもらっています。もちろん東京からの交通費など出費はありますが、長い目で見て今はその方がいいと思っています。

──福井県でお店を始めるきっかけは?

ありがたいことにまたお声がけを頂いたお話なんですが、やると決めたきっかけは現在一緒にお店の運営をしている私の主人なんです。「どうしてもやりたい!」と(笑)スタッフにも相談したところみんな賛同してくれたので、挑戦してみることにしました。みんなで1週間くらい福井で合宿したんですが、元々宿場町ということもあって、地元の方もすごくウェルカムな雰囲気で。役場の方達も本当に協力的なんですよ。それでより一層「やりたい」という思いが強くなりましたね。 

──素敵な街ですね。スタッフ採用はどのようにされていますか?

そうですね。最近は、Instagramで募集をかけています。SOL’S COFFEEで働きたいとあえて志望してくれる人を積極的に採用するようにしています。また、業務スキルよりも、SOL’S COFFEEに合うかどうかを重要視しています。それを見極めるために面接で必ずする4つの質問があるんです。「好きな映画はなんですか?」「好きな音楽はなんですか?」「これは誰にも負けないと思えることはなんですか?」「好きな業務はなんですか?」の4つ。
バリスタってコーヒーをいかに美味しくいれられるかの技術も大切ですけど、それ以上にいかに楽しくお客様とお話できるかだと思うんですよね。いろんな経験をしていたり、人生経験が豊富だったり、面白い話ができたり。そういうことが大切だと思っています。あとはスタッフ同士のキャラが被らないように考えながら、採用活動しています。

──面接は本当に大事ですよね。話は変わりますが、同じエリア(蔵前)で3店舗やっていて、お客さんを取り合ったりはしませんか?

最初は取り合うことも懸念していましたけど、結果的にはほとんどそういうことは起こりませんでした。商圏は近くても、5分も歩けば行動範囲って全然違うんだなーと感じました。なので、近い商圏に3店舗あるというのはメリットの方が大きいですね。スタッフも行き来できるし、1箇所で作ったものを他の店でも販売できる。また、私も出産をしてから現場にはあまり立っていませんが、日々お店には顔を出しているので、近くに3店舗あるのはとても助かります。 

──お店の宣伝活動で力を入れていることはありますか?

やはりメディア受けの良い場所にお店を出すというのが一番の宣伝効果だと思います。お店を出した頃、蔵前という街がちょうど雑誌などで特集を組まれ始めた頃だったんです。新小岩では取材なんてほとんどありませんでしたが、蔵前に出店してからは本当にたくさんのメディアに取り上げてもらいました。取材されやすい立地選びは大事なポイントだと思います。

──カフェ運営で一番大変だったことはなんでしょうか?

スタッフに関してですかね。22歳でカフェ経営を始めてから、本当に色々なことがありましたから。最初にもお話しましたが、元々一緒に始めた友人が1年で辞めてしまったり、一番忙しかった5店舗あった時期に、突然同時に3人のスタッフから「辞めます」って言われたり…
本当に辛かったです。多店舗展開していると特にですが、常にスタッフたちと一緒に居れるわけではないから、コミュニケーションがうまく取れなくなるということが何度かありました。スタッフとの距離感をどのくらいにすれば良いのか、とても悩みました。10年やってきて、やっと今いいチームになってきたなと感じてます。福井まで行ってくれるくらい同じ志のスタッフが集まってますから(笑)

──確かに(笑)素敵なチームだと思います。反対にカフェ運営で楽しいことって何ですか?

美味しいコーヒー飲んで、好きな人としゃべって、お店ができているって最高ですよね(笑)。うちはカフェ運営以外にも、コーヒー豆の販売、セミナー、イベント出店や音楽事業まで、とにかくいろんな事業を展開していて、そこもやりがいになっていますね。あとは、子供ができてからお店の近くに引っ越したんですが、スタッフはもちろん常連さんたちにも一緒に子育てをしてもらっている感じで、かけがえのないコミュニケーションが生まれています。福井にも子供を連れていって1ヶ月間過ごしましたが、とてもいい経験になったと思います。蔵前も福井も、本当にいい街だなーってしみじみ思います。

──カフェを続けていく上で大切なことは何だと思いますか?

コンセプトをしっかり作って、それをブラさずに貫くことだと思います。
10年以上カフェを続けてきて、本当に色んなことがあったから、もちろんブレかけたこともあるけど、結果、最初に決めた”毎日飲んでも身体にやさしいコーヒーを提供したい”というコンセプトは今も変わっていません。だからここまで続けてこれたんだと思っています。コンセプトはこれからも変わりませんが、開業時に「10年は続ける!」と言っていた10年が経ったので、今後の10年のテーマは”ひとを大切にする”ことも掲げていきたいなと考えています。これは、お客様はもちろん、スタッフ、コーヒー農家さん、SOL’Sに関わる全ての”ひと”を大事にしていきたいってこと。ここから10年また新たな挑戦をしていきたいと思っています。

【カフェ情報】
SOL’S COFFEE
http://kojincafe.com/cafes/sols-coffee/
http://www.sols-coffee.com/

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SOL’S COFFEE ROASTERY(取材でお邪魔した店舗)
〒111-0053 
東京都台東区浅草橋3-25-7
電話:03-5829-8824
営業時間:平日 8:00~17:00/土・日曜日 9:00~19:00
定休日:火曜日、水曜日(焙煎のため休業)
広さ:15坪
客席数:13席
スタッフ:10名(全4店舗合わせて)

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