「ケープルヴィル 写真館&カフェ」のカフェのコツ|No.010

外国人観光客で賑わう谷中商店街から少し路地に入った場所に佇む『ケープルヴィル』は、1階でカフェ、2階では写真館を運営するという古民家を改築したお店です。カフェ運営のためにソムリエの資格やチーズの資格も取得したというオーナーでカメラマンでもある若山和子さん。7年目にしてようやく軌道に乗ってきたと語られています。これまでのご苦労とカフェ運営に大切なポイントをお伺いしました。

連載「長くつづくカフェのコツ」
カフェをたのしくつづける秘訣を現役オーナーさんにインタビュー!これからの開業を希望するみなさんにはもちろん、今まさに店舗を運営されてるオーナーさんにとってもためになるヒントが満載です。
コンセプトや看板メニュー、また、収益の多角化や集客などをテーマにしています。

──お店のコンセプトを教えてください。

メインの商店街から一歩路地に入った場所にあるので、落ち着いた雰囲気の中で、本を読んだり、ワインを飲んだり、イベントに参加したりと、ゆっくり思い思いの時間を楽しんでもらうことをコンセプトにしています。2階の写真館は、築70年の古民家を改築していることもあり、この場所ならではの良い雰囲気で撮影できます。カフェのお客様が後日写真を撮りに来てくれたり、反対に写真館のお客様がカフェの常連さんになってくれたりと、2つの事業を一緒にやる相乗効果は大きいです。

すぐ近くの谷中商店街が外国人観光客を中心にここ最近とても盛り上がっています。うちのお店は商店街を抜けてすぐの場所にあるので、少し落ち着ける空間として利用してくれるお客様も増えてきました。オープン当初はここまでの盛り上がりはなかったので、おじいちゃんとおばちゃんの街といった感じだったのですけど、今や10メートルおきにカフェがあるくらいカフェの街になりました。 

──谷中の雰囲気変わりましたよね。

そうですね。「どこのカフェに行こうかな?」ってお客様が選べるようになったというのは大きいですよね。以前は地元の人が中心でしたが、最近は谷中商店街を目指してわざわざ足を運んできてくれる人も増えてきたので、客層も広がったと感じています。とはいえ、人が少ない日ももちろんあります。そんな時、いつもお店に遊びにきてくれる常連さんは本当にありがたいです。結局はどれだけ常連さんを作れるかが大事だし、日々感謝を忘れず営業していきたいです。

──それは本当に大事なことですね。一番忙しい時間帯や曜日はありますか?

やっぱり土日のお昼ですかね。あと、月曜日が定休日だからかもしれないのですが、火曜日が不思議なくらい混みますね。12時にすでに満席なんてこともよくあります。やってみてわかったことではありますが、混む日がわかってくると仕込み量などの調整もできるのでありがたいです。

──写真館とカフェの2軸で運営されていますが、それぞれの売上割合はどのようになっていますか?

実は1年目の冬はもうお店を続けられないと思うくらいどちらも厳しい状態でした。私がフリーランスでカメラマンをやっているので、そこで稼いだお金をお店に入れながらなんとか運営してきたという感じです。みんなで試行錯誤しながら続けてきて、オープン4年目くらいからやっと落ち着いてきた感じですね。そこからはおかげさまで売上は右肩上がりだし、カフェの売上に関しては最初の頃から比べると5倍くらいに伸びてます。スタッフも今は全部で11名になりました。写真館担当が4名、カフェ担当は各ジャンルに精通したプロや学生さんのアルバイト、自分の娘にも手伝いをお願いしています。

当初は単価の高い写真館の売上がカフェの売上の2倍以上あったのですが、最近ではカフェの売上が毎年20%以上ずつアップしていることもあり、写真館と同じくらいの売上を出せるようになりました。今が一番バランスが良い状態だと思います。 

──カフェ部門で5倍の伸びは素晴らしいですね。年間での売上目標はたてていますか?

最初は考えていましたが、数字目標を追っているだけでは売上って上がらないんですよね。なので、数字だけを追うことはやめました。7年近く経営を続けてきて今の良い状態になってわかったことは、大げさのようですが「命をかけてメニューを作る!」って取り組むことが一番大事ってこと。思いつきで面白そうなメニューだからと提供してもお客さんに想いは伝わらない。でも命をかけてメニュー開発するとお客様が自然と集まってくるんです。

最初にそれがわかったのがかき氷を提供し始めた時でした。氷へのこだわりはもちろんシロップも全て手作りで開発しました。シロップなんて作ったことがなかったので正直とても大変だったのですが、その努力が報われるように大ヒットしたんです。そこから、次はランチもこだわりのプレートランチを作ろう! とか、ディナーメニューに力を入れよう! と、スタッフ一丸となって命がけでメニュー開発したものは全てヒット商品になりました。本気でお客様のことを考えながらやれば想いはちゃんと伝わるということがわかったので、実は最近ソムリエの資格も取ったんです。 

──え、ソムリエの資格まで取られたんですか?

そうなんです(笑)。チーズの資格もそのあと続けて取りました。ディナータイムに力を入れようとワインを提供していたんですけど、やはりお客様はその道に精通した人から勧められたワインを飲みたいですよね。お客様から「ソムリエなんですか?」と聞かれることもあって、これは取らないといけない!と思い、仕事の合間に必死に勉強して2回目の試験でソムリエの資格を取得することができました。

──凄いですね!

ありがとうございます。12時に家に帰って夜中の3時まで勉強して、6時に起きて仕事に行くという生活は流石に大変でした(笑)。でもその甲斐あって、今までグラス600円の一番安いワインばかり出ていたのが、グラス1300円など高い価格帯のワインの注文が多くなったり、イベントとしてワイン会も開けるようになりました。「ソムリエです」と胸を張って言えるようになったので、お客様との信頼関係も築くことができています。

資格を取得してからはソムリエバッチをつけて接客しているので、お客様が「あの人ソムリエなんだね」なんてお話しているのが聞こえてきたりすると嬉しくなりますね。カフェって「こうしなければいけない」というルールがないから、その時に必要だと思うことに対して全力で取り組んでいけば生き残れるし、ちゃんとお客様はついてくると実感しています。

──これからカフェを始める人にとって本当に大事なポイントですね。販促活動はどのようなことをされていますか?

お店として今一番力を入れているのはInstagramですね。毎日空いている時間を見つけて更新するようにしています。よく「これを使えば集客できますよ!」なんて営業が来るんですけど、地道にコツコツやっていくのが個人店には一番です。すぐに効果は出なくても、しっかり続けることが大切ですね。

──カフェ開業をしていく中で、他にどんな苦労がありましたか?

私たち2人(開店当時共同オーナーだったシェフ)とも飲食未経験からのスタートだったので、オープン当初は知らないことが多すぎて苦労しました。本当に素人だったので、飲食業の基本がわかっておらず、お客様からクレームを受けてしまうこともありました。あとはやはり金銭面ですね。本当に資金がショートしかけることが何度もあってその都度「どこからお金を持ってこようか…」って考えてました。最近やっと私個人の持ち出しがなくなってきたというところです。とはいっても、長くお店をやっていると買い替えないといけないものも増えてくるし、どうしても設備投資がかかるので、ただ儲けたいという理由だけでカフェをやるっていうのは正直オススメできないですね。必死にこれまでやってきて、やっとなんとかやれているというところなので。

でも私としては、カフェをやって良かったと思っています。理由はファミリーが作れたこと。支えてくれるお客様ももちろんそうですが、大変な時期を一緒に乗り越えてきたスタッフとの「チーム感」を感じられるようになって、ケープルヴィルファミリーとして絆が深まってきたことは本当に嬉しく思いますね。

最後に、これから開業したい方へメッセージをお願いします。

本当に大変です!まずはそれでも本当にやりたいかを自分に問いかけてみてください。そしてそれでもやりたい!と思う人は、今のうちに人脈を広げたり、スキルアップのために修行をしたり、できることはたくさんあると思うので、やれるだけのことをしっかりとやっておくといいと思います。私たちはあとから本当に苦労したので笑

あと場所柄もありますが、これからは訪日外国人も増えてくるので英語はやっておいた方がいいと思いますね。カフェ運営は楽しいこともいっぱいあるから、事前に苦しいことを減らしておけば、楽しく運営することができると思います。いかに苦しさを軽減するか、これがカフェ運営の中で大切なことかもしれませんね。

【カフェ情報】
ケープルヴィル 写真館&カフェ
https://kojincafe.com/cafes/capleville/
https://www.capleville.jp/
────
〒113-0022 
東京都文京区千駄木3-42-7
電話:03-5834-8500
営業時間:(日曜〜木曜)11時〜19時 /(金曜土曜)11時〜22時
定休日:月曜日
広さ:9坪(カフェエリア)
客席数:14席(カフェエリア)
スタッフ:常時2〜3名(スタッフ数:写真館4名、カフェ7名)

開業無料相談のお申し込み・お問い合せはこちら
 
 

関連記事一覧