「cafe doudou」のカフェのコツ|No.013

東横線・白楽駅から徒歩30秒の裏路地にたたずむ『cafe doudou』は、今年16年目を迎えたギャラリーカフェ。白で統一された落ち着く店内は、開業時から変わらないデザインなんだとか。いつもそこにあるようなカフェとして長年たくさんの人に親しまれています。16年という長い月日をどのように過ごしてきたのか、マスターの井上さんにお伺いしました。

連載「長くつづくカフェのコツ」
カフェをたのしくつづける秘訣を現役オーナーさんにインタビュー!これからの開業を希望するみなさんにはもちろん、今まさに店舗を運営されてるオーナーさんにとってもためになるヒントが満載です。
コンセプトや看板メニュー、また、収益の多角化や集客などをテーマにしています。

──お店のコンセプトを教えてください。

コンセプトは「ない」です(笑)。最初は他店との差別化をはかるために、フランスを意識したカリブカレーを作ってみたり、ブラックミュージックをBGMでかけたり、黒人のマネキンを入り口近くに置いてみたりと、色々とやっていたのですが、自分が伝えたいこと地域のニーズが一致しないと気がついたんです。だから自分のこだわりは全て捨てて、この立地にいるお客様のニーズに合わせたカフェとして、とにかく「入りやすさ」を意識するようにして、現在に至ります。

──もともと井上さんは、飲食に関わるお仕事をされていたんですか?

もともとは家電メーカーの営業をしていたのですが、なんとなくこのままこの仕事を続けていても「なんのための人生なんだ」って思っちゃったんですよね。転職してもよかったんだろうけど、どこの会社も同じようなものだろうなと悩んでいたときに、本屋でたまたま手に取ったカフェ開業の本に影響を受けて、今まで包丁も握ったこともなかったのに、自分で料理をし始めたんです。そしたらあれもこれも「こんなに美味しいの?」ってくらいのクオリティで出来たんですよ(笑)。今となってはそんな甘い世界じゃないってことはわかるけれど、その時はすごく自信がついちゃって。そこから毎日必死になって料理の特訓をしたり、カフェの学校に通って経営についても学びました。その後、会社を辞め、知り合いのお店で修行をしながら物件探しをして、37歳の時に開業しました。 

──一気にカフェ開業に向けて動き出したんですね。物件はどうして白楽に?

白楽が地元だって言うのもあるのですが、都内は家賃がとにかく高くて、諦めたんです。最初は下北沢とかでやりたかったけど現実的に難しいと思っていた時に、たまたまこの物件の張り紙を見つけまして。当時は地元の人もあまり通らないエリアではあったのですが、駅から近いのはメリットだと思ったので、ここに決めました。

──本当に駅から近いですよね。

近いのは近いのですが、裏路地なので通り過ぎちゃう人もいて。お店をギャラリーとしても貸しているのですが、ギャラリーを見にきたお客様からは「わかりづらいです!」って怒られちゃうこともありましたよ(笑)。立地としては駅近だけど、「知る人ぞ知る」ような場所でもあるんですよね。

──16年続けていて、一番大変だと思うことはなんですか?

一番悩んだのはお客様との「コミュニケーション」ですね。マスターとお喋りしたいと来る人もいれば、一人で読書をしたい人もいる。中には「どうしてあの人とは楽しそうに話すのに、こっちとは喋らないの?」なんて友達みたいな感覚になっているお客様もいるんですよ。そんなことで悩むことになるとはお店を始める前は考えもしなかったですね。思っていた「接客のイメージ」と全く違って本当に苦労しました。もしこれから開業したいという方で、お客様との距離感が近く「お喋り」することを優先したいなら、絶対カウンター席を多く作るのがいいと思います。うちはカウンター席がないので、お客様とお話しする時は客席で話すことになってしまって、他のお客様も余計に気になってしまうんですよね。あとは、喫煙問題も悩ましかったですね。

──今は完全禁煙ですか?

今はもう禁煙にしましたが、16年前の開業時は自分も吸っていたので全席喫煙可でした。でも2011年に横浜市の条例が厳しくなってから、一気に禁煙ブームになったんですよ。いきなり禁煙にするのもお客様に申し訳ないと思ったので、喫煙者と非喫煙者が共存できるように「おタバコは1人3本まででお願いします」など言葉を選びながら注意喚起していたのですが、喫煙者の方は自分が責められているように思ったのか、怒って帰っちゃうお客様とかもいて。数年はどうするのが一番いいかと模索していました。そして去年の春に完全禁煙にしたのですが、今まで来てくれていた喫煙者のお客様はさっぱり来店してくれなくなりましたね。「居心地」って人によって全然違うから、中間をとりたくてもなかなか難しい。今でも悩んでいます。

──確かに。また20204月から法律も変わる(※1)ので、まさに「今」悩んでいるオーナーさんも多いと思います。では逆に楽しいことはどんなことでしょうか?

「自分の時間が持てること」ですかね。私は楽器が好きで、トランペット・バイオリン・サックスを演奏しているんですけど、営業中にお店のバックヤードで練習してできるようになりました。もちろんお金や労働時間を考えると、サラリーマンの方がいいかなと思いますけど、誰に雇われることもなく、自分らしく生活できることが、本当に楽しいです。

(※1)改正健康増進法について https://www.jti.co.jp/tobacco/rule/index.html 

──「自分らしく」それは素敵ですね。楽器はどこかで披露したりするんですか?

定期的に開催している音楽会で披露したり、2ヶ月に1度DJイベントもやっていて、そこでも演奏しています。若い常連さんたちが中心となって開催しているイベントです。DJをやってみたいという子にターンテーブルを貸してあげてDJしてもらったり、アットホームなイベントです。実はそのイベントでラップも披露しています。

──え、井上さんがラップをするんですか?!楽器だけじゃなくて?

そうそう(笑)。真似事でやってみたら出来ちゃったんですよね。こういうイベントは自分も楽しいし、集客にもなるし、お酒を飲んでくれる人も多いから売上にもつながる、月に1回なにかしらイベントはやるようにしてますね。正直、通常営業の売上だけだと厳しいのもありますが、新しいことをやりながら自分も楽しめるので、これからもイベントは積極的にやっていきたいですね。

また、通常営業以外でやっていることでいうと、開業時からずっとギャラリーとしての壁貸しも行なっています。2週間1万円で貸していて、SNSを通じて関心を持ってくれたイラストレーターさんや写真家さんが利用してくれています。おかげさまで2020年も半分くらい埋まっていて好評なんですよ。

──固定収入としては大事な部分ですよね。では最後に、これから開業したい方に向けてメッセージをお願いします。

開業前の資金準備はマストです。貯蓄0円で始めようなんて絶対無理なので、お金はしっかり貯めておきましょう。私も何かあった時のためにと、しっかり貯蓄していたので自己資金だけで開業できました。あとメニュー開発もとても大事です。内装が良ければ人は来てくれるだろうとか、友達が来てくれるから大丈夫とか、そんな甘いもんじゃありません。友達なんて来てくれるのは最初だけですから(笑)。なので、オープン前に自信を持って提供できるメニュー作りは必ずやっておいた方がいいと思います。特に、これからの飲食店に大事なのは「こだわり」だと思います。タピオカミルクティのような流行がある中で「それっぽい」ものでは個人店は勝負できません。「このお店と言えばこのメニュー」というものをしっかり考えておくほうがいいでしょうね。

カフェは待つ商売、誰も来ない日ももちろんあります。消費税も10%になったし、大型連休は街に人がほとんどいなくなるし、最近は台風なども多くて、「もう続けられないんじゃないか」って不安になる日もあります。でも先ほど話したようなイベントも楽しいし、常連さんがオリジナルのパーカーを作ってくれたり、メニューボードを描いてくれたり、やっぱりそういうのが嬉しいし楽しいので、辞められないんだと思います。気づいたら16年と言った感じですね(笑)色々と大変なこともあるけど楽しいことも多いので、開業に向けて頑張ってください!

【カフェ情報】
cafe doudou(カフェ ドゥドゥ)
http://kojincafe.com/cafes/cafe-doudou/
http://cafedoudou.webcrow.jp/

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〒221-0065 
神奈川県横浜市神奈川区白楽100-11-103
電話:045-433-6531
営業時間:13時〜24時
定休日:無休(臨時休あり)
広さ:9坪
客席数:12席
スタッフ:常時1名

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