「KEKU CAFE」のカフェのコツ|No.025
青森県南部町にある『KEKU CAFE』は、開業から14年目の人気カフェ。こだわりの生パスタと、美味しい自家焙煎コーヒーを求めて毎日たくさんのファンがやってきます。オーナーの小笠原さんは10代後半からバーテンダーとして勤め、飲食店経験は40年以上。そんな小笠原さんにお店を長く続けていく運営のコツをお伺いしました。
連載「長くつづくカフェのコツ」
カフェをたのしくつづける秘訣を現役オーナーさんにインタビュー!これからの開業を希望するみなさんにはもちろん、今まさに店舗を運営されてるオーナーさんにとってもためになるヒントが満載です。
コンセプトや看板メニュー、また、収益の多角化や集客などをテーマにしています。
──カフェを始めたきっかけを教えてください。
10代の頃、宮城県仙台市でバーテンダーをやっていました。20歳で店長になったのですが、その頃はバブルだったこともあり年間4000~5000万円の売り上げがありました。その後、岩手県の安比高原スキー場のペンションに勤め、コーヒーや料理についても学びました。
「いつかは田舎に帰りたい」とどこかで思っていたのもありまして、自分が今まで培ってきた経験をもとに独立を決意し、2006年に『KEKU CAFE』を開きました。ここは実家の土地で全部で550坪の敷地面積があるのですが、そのうち300坪が農地。そこで両親が作る美味しい野菜をお店で提供したいと考え、この場所にしました。この土地ありきで何ができるかを考えて、カフェという形態に決めました。2014年に店舗をリニューアルし、もともと300坪あった農地が100坪になった分、駐車場が200坪あります。都心の個人店だと考えられない広さかもしれないですね(笑)
──550坪!! すごく広大な敷地ですね。店内はどれくらいの広さですか?
店内の面積は31坪で、席数は約30席。今は新型コロナウイルスの影響で席の間隔を空けているので、7組(5つのテーブル席とカウンター数席分)入ったら満席になっちゃいますね。土地柄、車でいらっしゃるお客様が多いので、混雑している時には車内でお待ちいただいて、席が空いたらお車に呼びに行って…という形で運営しています。
──青森県内の新型コロナウイルスの影響は、いかがですか?
1月~3月の売上は平年並みでしたが、4月は半減しましたね…ただ、7月現在でいいますと昨年より少し良い状況です。青森県は夏にかけて各地で「お祭り」が開催されるんですが、うちのお店は立地的にお祭りがある時は人がそっちに流れてしまうので来店が少なくなるんです。けれど今年はそのお祭りがほとんど中止になって、そういった集客の波がなくなったのが7月の売上に影響しているのだと思います。
──なるほど。コーヒーの自家焙煎を途中から始められてますが何か理由はありますか?
焙煎を始めたのは、本当に美味しいコーヒーの秘密を知ってしまったからなのですが、それをたくさんの青森県の人に知ってもらいたいというのも理由です。というのも青森県はまだ缶コーヒー文化なんです。私たちは、地元のお客様に喜んでもらえることを一番に考えているので、地元の皆さんに「コーヒーって苦くないんだ!」「こんなに美味しいんだ!」と知ってもらえたら嬉しいです。今は息子が焙煎をしていますので、これから先もたくさんの人にケクーカフェのコーヒーを届けられればと思っています。 あとは、やはりコーヒー豆は店頭での物販や通販でも売上を立てられるので、将来的なことも考えて始めたということもありますね。
──美味しいコーヒー文化が広がっていくといいですね!接客で心掛けていることはありますか?
もちろん丁寧に接客することは大前提ですが、お客様とスタッフの関係性において上下関係なくお互いが対等にいい関係を築けるようにしたいと思っています。店名の「ケクー」は青森の方言で「召し上がれ、いただきます」という意味なんですが、そうした思いもこもっています。また、うちのお店では一見さんでも何度も来てくれている方でも同じように接するようにしています。いわゆる「常連さん」とばかり仲良くしすぎてしまうと、初めて来られるお客様に居心地の悪い思いをさせてしまうと考えているので。誰もが居心地よく過ごしてもらえるように、心掛けています。
──確かにそれは大切ですね。これから開業される方もそこは気をつけてほしいポイントです。お店の看板メニューはなんですか?
生パスタですね。「パスタ屋さん」だと思っている人も多いと思いますよ。麺にもこだわってこの地域で作られている国産小麦の「ねばりごし」という中力粉をデュラムセモリナ粉で挟んで3層構造にした麺を使っているんです。その麺と合わせるのは、季節の自家栽培野菜や地物野菜。日替わりパスタも人気ですよ。
──わぁ~、とっても美味しそうですね。通販はやっていないんですか?
通販はできないので、是非食べにきてください(笑)。スイーツも手作りですし、コーヒーも自家焙煎。お客様に喜んでいただけるように、こだわれる部分はしっかりとこだわっています。
──落ち着いたらぜひ食べにいかせてください! 小笠原さんは15年近くカフェ運営をされていらっしゃいますが、「これは大変だ」と思うことはどんなことでしょうか?
「人」ですね。地方は特にだと思うのですが、意識の高い人材は都市へ行ってしまいます。私のお店でも「将来お店を出したい」と修行していた子もいましたが、2人とも独立していきました。うちで経験を積んだ子が独立することはとても嬉しいことですが、反面、優秀な人材が辞めてしまうのもお店としては痛いです(笑)いい人材が集まらないことにはお客様にもいいサービスが提供できないので、やはり大変なことと言われれば人材確保になりますね。
──これから開業したい! という方がやっておくべきだと思うことを教えていただけますか?
「カフェをやりたい」って言うのは簡単だと思うんですけど、「目的」が大切だと思います。カフェをやるのが目的なのであればやらない方がいいと思います。あくまでカフェをやるのは手段であって、なんのためにカフェをやるのかをちゃんと考えないと、目標を見失ってしまいます。華やかでおしゃれに見えるけど、そんなことばかりじゃありませんからね(笑)。なので、まずはカフェをやる目的をしっかりと考えてみてください。
──まさしくですね。では最後になりますが、開業を目指している方へメッセージをお願いします。
簡単に儲かる仕事ではありません。儲かることだけを考えるのであればサラリーマンをやっていた方がよっぽどいいです(笑)なので、カフェをやることで自分は何を望んでいるのか、自分自身への問いを深めていくことが大切だと思います。ぜひ、頑張ってください!
【カフェ情報】
KEKU CAFE
http://kojincafe.com/cafes/kekucafe/
http://www.kekucafe.com/
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〒039-0802
青森県南部町大字苫米地字下宿7
営業時間:11:30〜21:30
電話:0178-84-3739
定休日:月曜日・火曜日(休祭日は営業)
広さ:31坪
客席数:30席
スタッフ:平日4名、週末5名程度