「Mizusaki Note」のカフェのコツ|No.026

江刺りんごで有名な岩手県奥州市にある『Mizusaki Note(ミズサキノート)』は、りんご農園を眺めながらゆったりとした時間を過ごせるカフェ。夫婦でりんご農園を営みながら、家具工房&カフェの運営を行っています。 2020年1月に10周年を迎えた『Mizusaki Note(ミズサキノート)』。ご主人と二人三脚でりんご農園、家具工房、カフェという3つの事業を行ってきた及川由希子さんにお話を伺います。

連載「長くつづくカフェのコツ」
カフェをたのしくつづける秘訣を現役オーナーさんにインタビュー!これからの開業を希望するみなさんにはもちろん、今まさに店舗を運営されてるオーナーさんにとってもためになるヒントが満載です。
コンセプトや看板メニュー、また、収益の多角化や集客などをテーマにしています。

 

──りんご農園とカフェと家具工房、とてもユニークなカフェですよね。どんなキッカケで作られたのでしょうか?

お客様からは「りんご農園のカフェ」のイメージが強いのですが、始めた頃は“りんごはおまけ”程度の気持ちだったんです(笑)。りんごの販売を手伝っているという感覚でした。「りんご農家のカフェといったらアップルパイがあると嬉しいな。季節になったら作って!」ってお客様に言われて作りはじめたのが、今ではうちにきたらコレって思ってもらえる位、みなさんに喜んでもらえるヒット商品(9月〜5月提供)になりました。定番をしっかり考えるって実はすごく大切なことでした。

──えー!そうなんですか? 最初からりんご農園ありきのスタートではなかったんですね。

そうなんです。というのも、もともと宮城県仙台市に住んでいまして、主人はグラフィックデザイナーをしながら家具を作っいて、私も育児しながらでしたが主人のデザインの仕事やHP制作を手伝っていました。ゆくゆくはそのまま仙台で家具工房とカフェをオープンしたいと考えていましたが、事情が変わりまして。主人の実家が岩手県の江刺でりんご農園をしていたのですが、色々なことが重なってりんご農園を手伝うことになったんです。そこから数年は農園を手伝いながら、デザインの仕事は続けていました。そして、資金の目処もたった2010年1月に『Mizusaki Note(ミズサキノート)』をオープンさせました。

オープンした頃は、あくまで主人が作る家具を購入される方がゆったりと過ごすスペースとしてのカフェという位置づけでした。なので、”りんごはおまけ”程度に考えていたんです。でもお客様からみたらりんご農園併設カフェですからね、「りんごのスイーツが食べたい」などの要望が増えてきて(笑)。徐々にりんごのスイーツやドリンク、加工品なども増やしていき、りんごがメインのカフェになっていきました。6年前に主人のお父さんが体調を崩したことをきっかけに、私たちが農園も引継ぎまして、7月には認定農業者になったんですよ。 りんご農園、カフェ、家具工房と毎日大忙しです。

──そういう経緯があったんですね!ミズサキノートの「ミズサキ」というのは地名ですか?

そうです、「水先」という地名です。「ノート」にはいくつか意味がありまして、「香り: りんごの香り、畑の緑と土の香り、北上川の水の匂い」「の音:農作業の音、鳥のさえず り、風の音、水の音、音楽)」「農人(のうと):りんご農家のこと、農と人を伝える」「ノート:記憶・記録」など、様々な思いが込められています。 地方から都心、都心から地方のハブになるような、いいモノを発信したり受け取れる場所にしたいと思っています。

──ちゃんと想いが形になっていますね。年に一度「りんごのおまつり」というイベントをやられていますが、どういったイベントでしょうか?

毎年11月末にりんごの収穫を全て終えたタイミングで、作家さんたちが作ってくれた「りんごモチーフ」の作品を店内に飾って、みんなでお祝いしましょうというイベントです。 最初の頃は、自分のやりたいイメージと実際のイメージが結びつかないことが多く、「やめようかな…」なんて悩んだ時もありました。でも、自分の思いを曲げずに続けていくうちに「こういう作品を展示したかった!」と思える作家さんとご一緒できる機会が増えてきました。作品が変わるとやはり来てくれるお客さんの雰囲気も変わってきて、さらに手伝ってくれるメンバーも増えました。私が最初にイメージしていたようなイベントがやっと出来上がったと本当に嬉しく思いました。前回10回目を迎えて「次回は一旦お休みして新たな展開を考えよう」なんて思っていた矢先、新型コロナウイルスが流行しはじめました。他のイベントも中止せざるを得なくなったので、2020年は準備の年と割り切って、 2021年からの新しい「りんごのおまつり」を考えているところです。

──大変でも自分の思いを曲げないことは大切ですね!新型コロナウイルスの影響はありましたか?

岩手県の感染者は今のところゼロ(7月21日取材時点)ですが、5月の店舗での売り上げは半分くらいに落ち込みました。けれど通販サイトを運営していたので、オンラインでのジュースやお菓子の売上が上がり、売上を補えたのでよかったです。「日々業務を頑張っている友人の看護師さんにリンゴジュースを贈りたい」とか「体調が悪いときに、ゼリー が有り難かった」など普段とはちょっと違う反応も頂けて、通販をやっていて良かったなと感じました。 GW明けはテイクアウトのみの営業にしていて、店内営業をはじめてからもしばらくはテ イクアウトが多かったのですが、最近は店内での飲食の割合が戻ってきていますね。

──確かに、ジュースなどの加工品も販売できるというのは強みですね!売上の割合はどれくらいですか?

カフェと物販で3:1くらいですかね。原材料を自分たちで作っているというのはとても強みだと思います。もともと加工品を作っていたわけではなく、「お店に来てもらったお客様に、自宅でも楽しんでもらえる商品を作りたい」と始めた結果、ジャムやお菓子などの加工品を提供するようになって、今では近所の産直にもお店のコーナーを設置いただけました。

──やはり収益の多角化は大切ですね。10年間色々なことがあったかと思いますが、カフェ運営をしていく中で「楽しい」と思うことはなんですか?

お客様からの「美味しい!」の一言ですね。私が厨房にいても背中越しに「美味しい」って呟く声とかも聞こえてくるんですよ (笑)。ふらっと来てくれたお客様が「このお店に来て良かったね!」と嬉しいリアクションしてくれたり。 あとは「りんごのおまつり」などのイベントを通じていろんな人とも繋がれることも楽しいことのひとつです。

──これから開業される方に向けて、準備でしっかりやっておくべきだと思うことを教えてください。

「私の売りはこれです!」と言えるくらい、自分の得意なことを把握することだと思います。あとはなるべく地元の生産物を使ったり、農家さんと繋がることでしょうか?コスト面での融通がききますし、顔が見える生産者さんのものを使う方がお店にとってもメリッ トになることがたくさんあると思います。

──なるほどー。カフェをやりたいという人の中には、農家さんへのアプローチをどのようにやればいいのかわからない人も多いと思います。生産者さんの立場から教えていただきたいのですが、実際〇〇をお店で使いたい!となった時、気軽に声をかけても良いのでしょうか?

マルシェに出店していたりするような農家さんだったら大丈夫だと思いますよ!大規模農家さんの場合は、ミニマムに分けることが手間なので難しいと思いますが、産直に出しているような農家さんだったら、連絡してみると話は聞いてくれると思います。緊張せずにぜひ声をかけてみてください。

──ありがとうございます!最後に、これから開業を目指している方へメッセージをお願いします。

どんな場所でも飲食店を続けていくことは大変なことだと思います。大きい店舗だからうまくいく、立地がいいからうまくいく、とかそういう時代ではありません。 自分のお店の売りをしっかり理解した上で、身の丈にあった開業をしてもらいたいと思います。経験値も少ない中最初から大きなスタートを切って自分で自分の首を絞めてしまわないようにしてください。どういうカフェにしたいのかイメージを具体的に固めていきながら、ひとり・ふたりでできる規模から始めるのが私はいいと思っています。私たちのお店も10年経ちましたが、まだまだ理想通りではありません。これからも理想に近づけるように頑張っていこうと思うので、皆さんも一緒に頑張っていきましょう!

【カフェ情報】
Mizusaki Note(ミズサキノート)

http://kojincafe.com/cafes/mizusaki-note/

https://www.mizusaki-note.com/
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〒023-1132
岩手県奥州市江刺稲瀬字水先595-2
営業時間:10:00~17:00
電話:0197-35-8548
定休日:月・火・水曜日(日曜日は月に2度ほどお休みがあります)
広さ:20坪
客席数:20席
スタッフ:2名

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